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2019.01.12 (土)

「 「同盟重視論」が見えないトランプ大統領 米国の攻勢に中国・習政権は後退の一年か 」

『週刊ダイヤモンド』 2019年1月12日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1262
 

2018年は最後まで気の抜けない1年だった。19年の今年はその延長線上で、より大きな変化と試練が生じるだろう。そうしたことを念頭に置いて決断を下せば、逆に日本にとっては好機の年になる。世界情勢に油断なく気を配り、気概を持ち続けることが必須だ。

昨年12月、ジェームズ・マティス米国防長官はドナルド・トランプ米大統領に辞任の意向を伝えた。トランプ氏のシリアからの米軍撤退に同意できず、2月末に政府を去るとしたマティス氏をトランプ氏は、今年1月1日をもって辞任させた。

日本が注目しておくべきことは、マティス氏が「米国は自由世界に不可欠の国だが、強い同盟関係を維持し同盟国に敬意を示さなければ国益を守ることはできない」として、同盟関係の重要性を説いたのに対し、トランプ氏にその気がないことだ。

昨年10月にマイク・ペンス副大統領が行った激烈な中国批判の演説を、日本は歓迎した。確かに日本にとって基本的に歓迎すべき内容だった。しかしここでも注目したいのは、ペンス氏の演説には、トランプ氏同様、「同盟重視論」がないことだ。

シリアで米軍と共に戦ったクルド人勢力を見捨てる決定をしたトランプ氏の立場で見れば、米国大統領として自分はかねてシリアからの撤退を明言していた。それは自分の公約だという思いがあるのだろう。

トランプ氏の特徴は、ひとつひとつの公約をその善し悪しは別として、実行することだ。氏の価値観はあくまでも「米国第一」で、同盟国は大事だが、米国の国益を揺るがせにすることはない。日米同盟に大きな比重を置く日本にとって、自力を強めることなしに米国に依存し続けることの危険は承知しておいた方がよいだろう。

中国の現状をよく伝えていたのが習近平中国国家主席のブレーンの一人、ヤン・スウエトン氏が「フォーリン・アフェアーズ」の2019年1~2月号に書いた論文だ。題名は「容易ならざる平和の時代 分断世界における中国の力」である。明らかに中国政府の意向を反映していると思われる論文で目を引くのは「中国はジュニア・スーパーパワーの役割を果たす」という表現だ。

この件りは、中国のあらゆる側面を厳しく批判し敵対視した10月のペンス演説を「誤解を招く」としながらも、「一面の真実がある」と評価した中で出てきたものだ。そこにはこう書いている。

「ポスト冷戦期の米国一強時代は終わり、二極時代が戻ってきた。中国がジュニア・スーパーパワーの役割を果たす時代だ」

確かに米国一強時代は終わった。その点では米国が抱く脅威には理由がある。しかし、中国は米国を排除するのでなく、米国をいわば兄貴分と見做す。中国は弟分でよいと、言っているのである。中国はかつてのように米国に対して弱者としての立場を強調する外交に転じようとしていると読みとれる。

12月21日に「ニューヨーク・タイムズ」紙に、コーネル大学のエスワー・プラサド教授が「中国は米国と妥協したがっている」と書いていた。

中国での広範な意見交換の結果、指導者の多くが中国経済の先行きに非常に深刻な懸念を抱いており、改革志向の人々はトランプ氏の強圧を、中国の改革を進める上での追い風として評価さえしているとの内容だ。

習氏は本来なら昨年中に開催していなければならない中国共産党中央総会を遂に開催できずに年を越した。その年毎の基本政策を決める中央総会が開かれなかったのは毛沢東時代以来約60年振りの異常事態だ。米国の攻勢の前に習政権がじりじりと後退する1年になるのか。日本にとっても難しい外交が待っている。だから覚悟が必要だ。

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